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8845を作る人達/転んでもタダでは起きなかった、染色職人の紆余曲折の人生。 | Atelier 8845 WEBMAGAZINE | 8845story

8845を作る人達

転んでもタダでは起きなかった、染色職人の紆余曲折の人生。

転んでもタダでは起きなかった、染色職人の紆余曲折の人生。

アトリエ8845 職人 森川 徳之さん

挑戦と挫折。
若いうちに経験できたからこそ、自分らしい歩幅で歩けるようになりました。

 


ーーアトリエ8845最年少職人の森川さん。アトリエではリペア(修理)と染色を担当されているそうですが、職人への起点と軌跡をお聞かせください。

 

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ファション系専門学校で服飾を学び、卒業後23歳で起業。その後自分のスキルをアップさせるため、染色技術を学びに上京。これだけ聞くと何だか華やかに聞こえるでしょうか。ですが実際は華やかとは全くの逆、苦難の軌跡です(笑)社会人としての第一歩は職人修行ではなく、一般販売の勤務。約2年弱経った頃、実家の手芸店で請け負っていたクリーニング取次店を拡大するという話が持ち上がりました。これを機に2店舗目の経営者として起業。クリーニングの利用が増えてきていた時代の流れと、携帯電話の黎明期で代理店業務に大きなメリットがあった時期なので、クリーニング、携帯電話契約の代理店、洋服のリフォーム事業の3本柱で営業をしていました。

 

ーー染色職人とは程遠いスタートだったんですね。

 

そうですね。ですが僕の祖母はテーラーとして仕立て屋を経営していたので、いつかは自分の手で服を作りたいと思っていました。僕は一人っ子で、両親が店に出ている間は家にこもってプラモデルを作るのが一番の楽しみでした。そんなインドアな子供だったこともあり、情報をキャッチする視野が狭かったんでしょうね。両親が切り盛りしていた手芸店と祖母がやっていたテーラーの世界だけが僕の知っている社会。そういった環境からか専門学校も服飾系でしたし洋服寄りの仕事を身近に感じていたので、僕の店で洋服のリフォームを始めたんです。

 

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ーーそこから洋服のリフォーム事業がメインに?

 

いえいえ、逆に店舗はスタッフに任せ、僕自身は携帯電話の販売代理店会社に籍を置き、二足のわらじ状態で三年間程サラリーマンも経験しました。その後、取引先だったクリーニング業の社長に店を売却し、僕は各地にあるクリーニング取次店に服の回収にまわりながら、リフォームの受注業務を広めていく企画長として社員になりました。ここから本格的に洋服のリフォーム業務を行うようになったんですが、営業がメインでした。のちに専務さんが社長になり「洋服のクリーニングだけではこの先残っていけない」と一念発起。そして革製品のクリーニング、染色、お直しを始めるための技術を習得するために、僕を東京にある会社に修行に出してくれました。

 

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ーーそういう流れで洋服から革に関わる方向へ風向きがかわってきたんですね。東京に行ったことで人生の選択肢も広がったのではないですか?

 

そりゃもう、東京は見るもの見るものが新鮮で(笑)部屋にこもってプラモデルばかり作っていた森川少年に教えてあげたいですよ。「もっと社会は広いぞ、楽しいぞ」って(笑) 当時の革のクリーニングというと「傷めないように汚れを落とす」ことだけを最優先に革を洗っていたんです。ですが修行先は「汚れを落としてから、さらに自然にきれいに直す」ために染色を施していたんです。そこで革の染色技術の基本を学びました。革製品は擦れによって変色したりするので、レザーバッグを長く美しく持つためにも染色技術は喜ばれる技術ですし、仕事の喜びも大きかったです。それに、アトリエ8845メンバーのきっかけになった技術でもあるので、今思うとここが分岐点のひとつでしょうかね。

 

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ーープラモデル作りで鍛えられた器用さが身を助けましたね(笑) そしていよいよアトリエ8845へと舞台が変わるわけですか。

 

いえいえ、ここからがまた波乱もあり…。
染色の修行に行った先は高級靴をメインに扱う工房で、そこで革靴に興味を持ち、靴や鞄の革製品の修理技術も学びました。そんな刺激的な東京修行の日々で視野が広がったからか、また一から自分自身でやりたいという願望が大きくなったんです。 ものづくりの面白さを、ぎゅっと短期間で体感したからでしょうか、クラフトマンシップに火が点きました(笑) しかし、まずは恩を返してからと思っていたので修行を終えて関西に戻り、レザー部門の立ち上げを済ませ、鞄、靴、洋服のリメイク業務で再び起業しました。ですが、数年で撤退。その時は事業を辞めて解放されたというより、しばらく充電が切れたように無気力で真っ白な状態になりました

 

ーー若い間にいろんな経験をしてこられたんですね。明るい森川さんからは想像もつきません。大変だったと思いますが、復活までにどれくらい時間がかかったのですか?

 

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当時は一人で現状を受け止めきれずキツかったですね。充電期間はご贔屓さんの仕事のみを自宅で請負いながら生活していました。もともと染色技術の教え子だった信頼できるパートナーの存在と、幸い前向きな性格ということもあり半年で復活しました。そして以前のリフォーム会社の知人の紹介で、アトリエ8845の一員になりました。人の繋がりには本当に感謝ですね。あの経験は人に支えてもらっている有難さを痛感しました。

 

ーー親ほど年が離れた大先輩職人の藤原さんと竹田さんとはすぐに打ち解けられたのですか?

 

職人の職場はピリピリしてると思われがちですが、そんなことは全くないです。もちろん職人ですから、仕事には厳しい目とプライドをお持ちです。ですが大先輩の器の広さというんでしょうか、すっと馴染ませてもらえました。休憩中にはお茶目なトークで盛り上がる笑い溢れる環境です。お2人は革製品を一から作ることができる革職人ですが、僕は修理の経験しかありません。ですので入社してから藤原さんに革の取り扱いの知識を教えていただきました。 竹田さんは時々助言をしてくれたり軽快なトークで空気を和ませてくれたりと、朗らかなお母さん的存在でした。見た目は頑固親父みたいですけどね(笑)

 

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ーーみなさん仲良しで、いつも楽しそうですよね。では、アトリエ8845での森川さんのお仕事内容を聞かせてください。

 

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担当はリペア(修繕)と染色です。先輩職人が仕上げたバッグや財布などのコバ塗りもします。染色で大事なのは最終の商品の仕上がりのイメージを明確に持つこと。ただやみくもに新品に近い感じを追求すると、『塗った感』がでて不自然なので、基本的には違和感のない美しさで最善の状態へ仕上げることを優先しています。そうそう、染色技術を学んでから初めてのリペアがエルメスのバーキンだったんですよ。難易度が高い黒色で、高級であるがゆえのプレッシャーとで、作業終了後2日ほど知恵熱で寝込みました(笑)

 

ーーミスが許されない作業ですから神経を使いますね。簡単に革の染め直しの手順を教えてもらってもいいですか。

 

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女性のお化粧と同じですよ。革製品もスキンケアが重要。 革も放っておくと乾燥していくので、表面を洗浄した後しっかり保湿ケア。染色前に重要な行程です。 一番難しいのが色作り。例えば同じ黒の中にも赤みがあるとか黄色味がかっているとか、微妙な判断が必要で色を作るのが難しいんです。塗りも均等な厚さで素早く仕上げないとムラになりますし、染料や顔料の特性も理解しながら部分によって刷毛の種類を変えて作業します。色づくりと刷毛の扱いは感覚も重要なのでかなりの修行が必要なんですよ。染色の行程は『最後の仕上げ』ということもあり、自分が携われることに誇りを持って取り組んでいます。

 

ーーそれでは最後に、職人としての目標を聞かせてください。

 

鞄の修理と制作でいうと職人歴はまだ5〜6年ですが、 いつか一から作れるようになってオーダーなどにも挑戦してみたいです。目立ちたくはないけれど、縁の下の力持ちで少しの爪痕は残したい。何事も無理をしすぎず着実に。自分の歩幅で少しずつ前に進んで願いを叶えていけたらいいなと思っています。

 

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** わたしの相棒道具 **

 

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筆と刷毛。作業によって使い分ける。使用頻度が高いのは混ぜ筆、塗り筆、刷毛(小・中)。なかには10年以上使っているものも。毛の癖が自分に馴染んでくるので、塗る色によって使い分けるのではなく、作業によって適した太さ、質感を選択。

 

 


 

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【森川さんプロフィール】

『一針入魂』21才でクリーニング店において、洋服リフォームの仕事に従事していましたが、会社から新規事業立ち上げのため、靴、バッグの修理研修を受け、理由あってバッグの会社へ転籍しました。
色々な修理を手がけたおかげでバッグ、サイフ、衣料、などの修理に生かされ、今となっては何でもチャレンジした事で、どんな修理品にも諦めずに挑めるようになり職人としての喜びを感じています。

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